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害者支援施設における虐待防止委員会の役割と設置要件


記事の概要:
この記事では、障害者支援施設において設置が義務づけられている「虐待防止委員会」について説明します。虐待防止委員会とは、障害のある人への虐待を防ぐために設置する組織です。委員会では、虐待防止の計画策定や発生防止策の検討などを行い、施設全体で情報を共有します。この記事ではその役割や設置要件を具体例を交えてやさしくシンプルに解説します。

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虐待防止委員会の仕組みと運営のポイント

虐待防止委員会の役割は大きく3つあります。まず第一に、虐待防止のための計画づくりです。たとえば、委員会では新しい職員向けに虐待防止研修のスケジュールを組んだり、職員の働く環境や条件を見直す計画を立てたりします。事業所内の方針(指針)を作成することも重要です。次に、職場環境の点検・監視です。組織が閉鎖的にならないように、虐待が起こりやすい状況がないか定期的にチェックします。最後に、虐待発生後の検証と再発防止策の検討です。万が一虐待やその疑いの事案があった場合、委員会で原因を分析し、再発を防ぐ対策を考えて実行します。このように委員会は、虐待を未然に防ぐ取り組みや、問題が起きたときのフォローを主導します。

次に、委員会の設置にあたって必要な体制を見ていきましょう。まず、委員会のメンバー構成についてです。委員会には施設長(管理者)と専任の虐待防止担当者(必ず配置が義務づけられている担当者)が必ず参加します。これらの責務と役割分担をあらかじめ明確に決めておくことが大切です。加えて、利用者やその家族、虐待防止に詳しい外部の専門家などをメンバーに含めるよう努めることが望まれています。また、事業所の規模によっては、法人全体で一つの委員会を設置する方法も認められています。

開催回数や方法についても決まりがあります。委員会は少なくとも年に1回開催する必要があります。参加者数に最低人数の決まりはありませんが、施設長と担当者が参加すれば問題ありません。小規模な事業所では管理者と担当者の2人でもかまいませんし、テレビ会議での開催も可能です。会議で決まったことは適切に記録し、5年間保存します。結果は職員全員に伝え、改善策の効果を検証します。なお、委員会活動の目的は利用者の安全確保や情報共有による未然防止であり、職員を罰することではない点に注意が必要です。委員会で決まった報告・改善の方策は、施設全体で共有し、再発防止につなげるためのものです。

具体的な対応例として、厚労省資料では以下の項目(ア~キ)が挙げられています。列挙すると長くなるため、表にまとめました:

項目内容(詳しい解説・現場での具体例)
虐待や不適切な対応が起きた場合にすぐ記録できるよう、事業所ごとに「虐待発生報告書」などの書式(様式)を準備します。これにより、現場で迷わず記録・報告ができ、隠ぺいの防止や、情報の統一管理につながります。例えば、利用者のケガや暴言などもこの様式に記載します。
虐待が疑われる出来事があったら、職員はできるだけ早く、その時の状況・背景・対応を具体的に記録し、上記の様式を使って報告します。「どこで」「誰が」「何を」「どんな状況で」起こしたのかを明記し、自己判断で判断を止めず必ず委員会へ伝えるのが重要です。
報告された事例はすべて虐待防止委員会に集められ、委員会で集計・分析します。たとえば「同じ担当者の時にトラブルが多い」「同じ時間帯に発生しやすい」といった傾向も洗い出します。こうした傾向把握は再発防止に欠かせません。
委員会は、報告された事例ごとに「なぜ起きたか」「背景は何か」を詳しく分析します。例えば、人手不足や職員の疲労、研修不足などが根本原因となっていることも多く、こうした点も含めて再発防止の具体策(例:追加研修の実施、シフト見直しなど)を考えます。
虐待そのものだけでなく、普段の職場環境(労働条件)のアンケートや点検票も作り、委員会で定期的に確認します。たとえば「職員が過剰な業務を抱えていないか」「休憩がしっかり取れているか」などもチェックし、職場のストレス要因を減らす工夫につなげます。
委員会で得られた事例や分析結果は、会議だけにとどめず、全職員に周知します。例えば、定期ミーティングや回覧、掲示などで共有し、職員一人ひとりが自分ごととして再発防止策を理解し、日々の業務に生かせるようにします。
新しく講じた再発防止策(例:研修強化、見守り体制の強化など)の効果が本当に現場で発揮されているか、委員会が定期的に確認します。うまくいっていない場合は、再度原因を探り、改善策を追加します。ここまでやって初めて「対策が形だけで終わらない」委員会となります。

事業者・起業希望者が押さえるべきポイント

  • 委員会の体制を整える: 虐待防止委員会を設置し、施設長や専任担当者を参加させます。利用者や家族、外部専門家の参画も考えましょう。法人単位での開催も検討できます。
  • 定期的に開催して共有する: 委員会は少なくとも年1回開催し、その内容や結果を職員に伝えます。会議内容は記録して組織全体で情報共有します。
  • 報告・検証の仕組みを作る: 虐待発生時は報告用の様式を使って記録し、委員会で事例を分析します。分析結果に基づき再発防止策を検討し、その効果を検証します。


【免責事項】

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、当事務所は十分な注意を払っておりますが、法令改正や各種解釈の変更等に伴い、記載内容に誤りが生じる可能性を完全には排除できません。各事案につきましては、個々の事情に応じた判断が必要となりますので、必要に応じて最新の法令・通知等をご確認いただくようお願い申し上げます。