運営指導 クラスター02「事業所運営における留意点」|7 曖昧な会計区分とルールを欠いた会計運用
行政の確認ロジックは「書類→記録→運用」です
会計区分は「会計担当の仕事」と思われがちですが、運営指導では“運営として説明できるか”が確認されます。行政担当者は、ルールがどこに書かれているか、帳簿から会計区分が見て取れるか、誤りが出ないように誰がどう点検しているか、という問答の流れが想定されます。
まず書類です。会計の区分をどう切っているのか、会計規程や経理区分のルールを示すよう求められます。さらに、会計をサービス種類や事業所(拠点)などの単位で分けて管理している場合、家賃や光熱費、人件費など、複数の単位にまたがって発生する費用が出てきます。こうした費用を、各単位にどう割り振っているか(按分)について、基準と根拠を示すよう求められることがあります。
次に記録です。区分が分かる帳簿を提示し、区分ごとの数字が追える状態になっているかを見られます。按分をしているなら、面積・人数・稼働などの根拠資料があり、帳簿上の数字とつながる形で示せるかがポイントになります。
最後に運用です。月次の締めで、入力する人と確認する人が決まっているかが見られます。誤りが出たときにどう直すか。区分のルールをいつ、誰が見直すか。こうした流れを説明できるかどうかで、区分経理が形だけになっていないかが分かれます。
つまずきやすい点:首尾一貫した会計原則を示せないとき
何が問題か
「会計を区分しています」と言っても、収支予算書・決算書等の会計書類で区分が曖昧であったり、あるいは区分があってもその分類に一貫性がない、また、元になっている帳簿や電子データまでさかのぼれない、という問題が起こり得ます。こうした状態だと、会計書類の数字は示せても、「なぜその区分なのか」「この数字はどこから来たのか」を問われた際に、説明が苦しくなります。
もう一つの問題は、費用按分の根拠が不明瞭だということです。一定の基準で経費を割り振っている場合は、そのルールと根拠が説明できるかが確認されることがあります。しかし、そのルールが文書化されていない、事業所運営の状態に即した内容になっていない、帳簿の数字と突き合わせて説明できない、こうしたズレがあると、改善の余地があると見られます。
なぜ問題か
運営指導では、前述のとおり、会計帳簿と実態の整合性や、按分処理が根拠資料と合っているかを確認されることがあります。さらに運用の観点では、月次の点検のしかたや、帳簿に誤りが見つかったときの訂正の流れまで説明できるかが問われることがあります。
決して税理士さんのようである必要はありませんが、筋道たてた説明ができない場合、区分の是非そのものよりも、「区分はあるが、適切な会計運用ではない」と受け取られることがあります。
ありがちな誤解(NG解釈)
「会計規程はあります。また区分も決めています。(でも、実際の帳簿作業は経理が決めている)」「按分は毎月同じ比率でやっているので大丈夫です。」「帳簿はあります。必要なら会計担当が説明します。」「間違いがあったらその都度直します。」
――これらの受け答えは、姿勢としては間違ってはいません。ですが結果として、区分や按分作業が担当者任せに見えやすく、また説明が会計担当の個人技で止まってしまいます。事業所運営で大切なことは、会計を含め、首尾一貫した管理者による運用の一元管理です。
そのまま使えるチェックリスト(書類/記録/運用)
運営指導の場で確認を求められても慌てないよう、次の点がそろっているかを確認してください。
書類
- 会計内規に、区分経理のルール(事業所/サービス等の切り方)が書かれていますか
- 区分の一覧(どの区分があるか)が整理されていますか
- 按分ルール(人件費・家賃等の基準と根拠)が明文化されていますか
- 承認フロー(作成者・承認者・点検者)が分かる資料がありますか
記録
- 収支予算書・決算書等の会計書類で、区分した内容が分かる形で示せますか
- 区分が分かる会計帳簿(会計ソフト等の出力で可)を示せますか(例:試算表、総勘定元帳、補助簿など)
- 按分をしている場合、その根拠資料と、帳簿の数字との突き合わせができる形で残っていますか
運用
- 月次締めで「入力する人」「確認する人」が説明できますか
- 点検の頻度(毎月など)と、点検観点(区分・按分・突合)が決まっていますか
- 誤りを見つけたときの是正手順(修正伝票、再確認)が言えますか
- 区分ルールの年次見直しと、変更時見直しのタイミングを説明できますか
まとめ
運営指導で確認されるのは、「会計をどう区分しているか」そのものよりも、その区分が会計書類と帳簿(または電子データ)までつながっていて、筋道立てて説明できるかです。
運営指導までに、書類で区分ルールと按分ルール、確認の流れ(作成・承認・点検)を押さえておきます。あわせて、記録として会計書類と会計帳簿が追える状態にし、按分の根拠資料も突合できるよう残します。最後に、月次の点検と誤りが見つかったときの訂正の流れ、ルールの見直しのタイミングまで説明できるようにしておくと、当日の受け答えが楽になります。
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本稿は、運営指導で確認されやすいポイントを、実務の目線で整理したものです。制度の取扱いは年度や自治体、事業所の状況によって変わることがあるため、最終的には最新の公式資料とあわせてご確認ください。また個別具体的な判断において迷う点や不安が残る場合は、状況を伺ったうえで整理のお手伝いもできますので、お気軽にご相談ください。
