障害児(者)福祉サービス事業者が施行までにやるべき5つの作業カテゴリーを整理する
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お急ぎの方、ここだけは読んでください
- 数ある施行前準備の中でも、事業所運営、日々のオペレーションに直接手が入るのは、犯罪事実確認・防止措置、安全確保措置、情報管理措置の3つです。
- 犯罪事実確認・防止措置は、前科確認をどう回すかだけでなく、犯罪事実確認の結果や性暴力等が行われる「おそれ」などの予兆を取らまえて、どのような対策を打っていくか、という点まで含みます。
- 安全確保措置は、日頃からの性暴力未然防止、早期把握、相談しやすい体制づくり、疑いがあるときの初期対応など、現場で性暴力を起こさせない・見逃さないための仕組みづくりに関わります。
- 情報管理措置は、犯罪事実確認情報や面談情報などのプライバシー情報を、誰が、どのルールで、どこまで扱うかという、規程整備と秘匿情報管理に関わります。
義務対象事業者(学校設置者等)
○ 障害児福祉サービス(自発・方デイ・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)
○ 障害児入所施設
認定対象事業者(民間教育保育等事業者)
○ (こどもに対してサービスを提供する)居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援
※上記線表は、行政側資料がウェブ上で配布・再利用できないため、当事務所側で再構成したものです。
システム登録|制度対応の入口になる作業群
まずシステム登録です。ここには、GビズID取得、事業者情報登録、国からの確認への対応、権限設定準備、権限設定が並んでいます。
流れとしては、事業者はまずGビズIDを取得し、それを基にシステム上で事業者アカウントを登録し、担当者が行う事務に応じて権限設定を行う流れになっています。なお、事業所のアカウント登録は、義務対象事業者の場合はビズID取得後に、認定対象事業者は認定申請前にそれぞれ行う整理となっています。
このようにシステム登録は、後の犯罪事実確認作業を回すための土台作りです。また、犯罪事実確認申請も含め、原則すべてオンラインでのみ行われます。
犯罪事実確認・防止措置|犯歴確認と不測の事態における対応策
二つ目は、犯罪事実確認・防止措置です。このグループでは、制度についての従事者等への周知、犯歴確認の対象となる従事者の範囲の検討、不適切な行為の範囲の検討・確定、就業規則や採用募集要項等の見直し、採用時の前科確認など、犯罪事実確認を回す前提となる準備が含まれます。
なお、防止措置とは、犯歴確認の結果だけでなく、児童対象性暴力等が行われるおそれがあると事業者が把握した場合に、実際の発生を防ぐために講ずる対応をいいます。たとえば、不適切な行為やその兆候を把握したときに、配置の見直し、業務からの切り離し、追加の監督、内部ルールの発動などを速やかに行うことが想定されます。
イメージ図を以下の通り示します。安全確保措置|この制度の本丸に近い作業群
三つ目は、安全確保措置です。当事務所では、このグループがこども性暴力防止法を現場に落とし込む際の本丸だと考えています。第一回目の記事でも強調したように、本法の狙いはなにかの「犯人探し」ではなく、「性犯罪を起こせない・起こさせない環境を整えること」であると申し上げました。その意味において、体制整備、相談窓口の調整、周知活動、事案発生時の対応を含む内規策定、研修計画、児童・保護者向け周知活動などは、全てが抑止力となる重要な取り組みです。
日頃から講ずべき措置として、服務規律等の明確化、施設等の環境整備、対象業務従事者に対する研修、児童等や保護者への教育・啓発があり、その後に、児童対象性暴力等を把握するための措置として面談等による早期把握や相談しやすい仕組み、さらに、疑いがある場合の初期対応、調査、調査を踏まえた対応まで並んでいます。
障害福祉サービスという視点で見た場合、たとえば障害の種類や程度に応じて、点字やイラストなど、理解しやすく回答しやすい表現・方法を用いて相談や周知活動を進めること、また、本人の回答を手助けする場合でも、普段のケア担当者ではなく通常は担当外の従事者が支援する工夫が考えられます。
前掲の図のように、まずは日々の運用の中で安全確保措置を適切に実行し、そもそも性暴力につながるような事案が起こらないよう尽力します。そのうえで、万が一性暴力等につながる「おそれ」を把握した場合には、防止措置を施し、子どもへの性暴力を防ぐ、、、という二段構えの構造になっています。性犯罪の9割は初犯と言われるなか、日々の運用における安全確保措置の忠実な実行が何より大切です。
情報管理措置|情報漏洩を起こさないための仕組みづくり
四つ目は、情報管理措置です。ここでは、情報管理規程の作成、規程に沿った情報管理体制の整備、情報管理担当者向け研修の実施が示されています。
ガイドラインでは、情報管理措置が独立した章として置かれており、全体像、個人情報保護法との関係、犯罪事実確認記録等を厳正に管理するため手法、情報管理規程の作成など多岐にわたって整理されています。
犯罪事実確認情報はオンライン上で目視確認するのみとし、備忘録や内部人事データへの転載、「黒・白」などの一部表現を変えた状態で情報を保持することなど、これら一切を控えることが望ましいとの行政の声があります。それほどまでに、この種の個人情報の漏洩は、本人に対して償うことのできない損害を与えうるものです。何をどのルールで管理し、誰が扱い、どこまで共有し、どの規程に基づいて運用するかを慎重に設計します。
その他|事業者向け研修など
「その他」に分類されているのは、事業者向け研修の受講です。これは、従事者向け研修や情報管理担当者向け研修とは別に、事業者として制度全体を理解し、残る各準備を進めるための前提資料・研修と位置づけられていると考えられます。ただし、ガイドライン本文においても、その詳細な内容までは細かく示されていないため、詳細が判明次第追って記事をアップデートいたします。
まとめ
施行前準備は、行政側の提示した5つの作業カテゴリーに分けて整理すると見通しが立ちます。その中でも一定の作業量が想定されるのは、犯罪事実確認・防止措置、安全確保措置、情報管理措置です。
こども性暴力防止法は、犯歴確認だけを行う制度ではなく、性暴力を起こさせない環境を事業所の中に作るための制度です。だからこそ、相談体制、日々の運用、情報管理まで含めて、事業所全体を整えていく必要があります。取り組まなくてはならない分野の多さにプレッシャーを感じるのも当然のことだと思います。ですが、子どもの最善の利益を考え、力強く推進したいものです。