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独習 こども性暴力防止法 | 第八回 不適切な行為の範囲をどう定めるか|障害福祉事業者が言語化しておくべき線引き

適切な行為の範囲をどう定めるか|障害福祉事業者が先に言語化しておくべき線引き


この記事は約4分で読めます。


お急ぎの方、ここだけは読んでください

  • 「不適切な行為」は、まだ児童対象性暴力等そのものではありません。しかし、継続・発展すれば性暴力等につながり得る行為として、事業者が見逃してはならない兆候です。
  • 「重大な不適切な行為」はさらに重く、ガイドライン上、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断された場合に準じて対応するとされています。
  • 何が不適切かは、子どもの年齢、発達段階、障害特性、支援内容、現場の状況で変わります。つまり、ガイドラインの具体例をそのまま写すだけでは不十分と言えます。
  • だからこそ、障害児福祉事業者様は自分たちの業態に照らして、不適切な行為の範囲を先に明確化し、報告ルール・対応ルールと一緒に定める必要があります。
  • また、特に注意しなければならないことは、不適切な行為は「まだセーフ」ではないということです。確認された時点で、事業所は速やかに初期対応に入っていくことが法令上求められます。

以下、こども性暴力防止に関係する障害児(者)福祉サービス事業者の区分けを再掲しておきます。

義務対象事業者(学校設置者等)

 ○ 障害児福祉サービス(自発・方デイ・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)
 ○ 障害児入所施設

認定対象事業者(民間教育保育等事業者)

 ○ (こどもに対してサービスを提供する)居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援

不適切な行為とは何か|まだ性暴力ではないが、放置してはいけない行為

ガイドラインは、「不適切な行為」について次のように定義しています。

それは、その行為自体は児童対象性暴力等には当たらないが、業務上必ずしも必要な行為とまでは言えず、継続・発展すると児童対象性暴力等につながり得る行為、を指しています。

ここで大事な点が二つあります。

一つは、まだ性暴力そのものではないということ。

もう一つは、だからといって軽く見てよいわけではないということです。

ガイドラインは、不適切な行為について、児童対象性暴力等に至らずとも、児童等の人としての尊厳を侵害し得るものという認識に立つことが重要だとしています。つまり、「犯罪ではないからセーフ」ではありません。むしろ、ここで止めないと次につながる、という位置づけです。

重大な不適切な行為とは何か

次に、「重大な不適切な行為」とはなんでしょうか。

ここは、不適切な行為の延長線上にある、より重いカテゴリーです。

ガイドラインは、不適切な行為が初回かつ比較的軽微な場合には、まずは繰り返さないよう指導し、その後を注意深く経過観察するなど、段階的な対応を取りうるしています。

一方で、指導したにもかかわらず同様の行為を繰り返した場合や、加害認識、児童等に与えた被害の重大性、悪質性等が認められる場合にはこれを重大な不適切な行為とし、児童対象性暴力等が行われたと合理的に判断された場合に準じ、原則として当該従事者を対象業務に従事させないことが求められます。

つまり、重大な不適切な行為は、「まだ犯罪とは断定しないが、実務対応としては性暴力が認められた場合と同等の重大事案」と言えるものです。


障害福祉事業者は、どのように適切・不適切の線引きをするべきか

ガイドラインでは、不適切な行為・重大な不適切な行為の具体例を表で示しています。これは、公的な一次資料であり、間違いなく参考・指針になります。ですが同時に、ここに列挙されている具体例は、対象事業者、事業内容、対象児童等の発達段階や特性、現場の状況等によっても、不適切であるかどうかが左右されることも事実です。

これは障害福祉サービス分野では特に重要です。

たとえば、身体介助、更衣介助、排泄介助、清潔保持、訪問支援における密接な関わりは、障害児支援の現場では日常業務として必要になることがあります。幼い子どもや重い障害のある子どもへの支援と、一般的な小学生・中学生・高校生に対する支援とでは、同じ身体接触でも意味が違います。

そのため、一般的な学校現場よりも、適切な支援と不適切な行為の線引きが難しい場面があります。ここからも分かるように、障害児福祉事業者がすべきことは、行政の具体例を理解し取り入れるとともに、自分たちの支援現場で起こり得る行為を前提に、「ここから先は不適切」と言語化することです。この言語化作業は、管理者・児童発達支援管理責任者・サビ管サ責が旗振り役となって現場のスタッフ皆を巻き込み、全員が納得のできる「仕分け」を行うことが大切です。

不適切な行為が確認されたら、もう事業所は動かなければならない

前述の通り、不適切な行為に対する対応は、「まだ犯罪ではないから、少し注意して終わり」ではありません。対象従事者による不適切な行為が合理的に判断される場合には、法第6条等の「児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるとき」に該当するとして、防止措置を講じる必要があるとしています。具体的には、初期対応として関係者への聞き取り、保護者への説明、行為の内容把握と評価、具体的な防止策の実施、関係機関への通報・連携など、多岐にわたって対処しなければならなくなります。

問題の芽が見えた以上、加害者と子どもの接触の見直し、報告、記録、保護者対応、必要に応じた業務からの切り離しなど、事業所として動かなければいけません。

まとめ

不適切な行為は、まだ児童対象性暴力等そのものではありませんが、継続・発展すれば性暴力等につながり得る行為であり、放置してよいものではありません。さらに、重大な不適切な行為に至った場合には、ガイドライン上、児童対象性暴力等が行われた場合に準じた対応が求められます。

そして、何が不適切な行為に当たるかは、子どもの年齢、発達段階、障害特性、支援内容、現場の状況によって変わります。だからこそ、事業者ごとにその範囲を明確化し、対処規程や就業規則の中で、報告ルールや対応ルールとあわせて言語化しておく必要があります。結局のところ、不適切な行為は「まだセーフな行為」ではなく、事業所として対応を開始すべきトリガーだと理解することが重要です。






【免責事項】

本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料その他の公表資料に基づく内容です。今後、通知、Q&A、事務手続マニュアル、各種ひな型等で具体的な運用が補われる可能性があります。