新規採用者の犯罪事実確認が従事開始までに終わらないとき|いとま特例の考え方
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お急ぎの方、ここだけは読んでください
- 新規採用者の犯罪事実確認は、原則として内定・内示等から従事開始までに終える必要があります。日本国籍者でも2週間~1か月程度、外国籍者では1か月~2か月程度かかるため、採用即対象業務に従事、はできなくなります。
- 上記の従事前の確認が間に合わない場合の例外対応が、いとま特例です。ただし、これは「使えれば便利な抜け道」ではなく、急な欠員等のため真に必要な場合に限られるものです。
- いとま特例を使っても、確認が済むまでは原則としてこどもと1対1にさせない必要があります。ここが最大のポイントです。
小規模の障害福祉事業者ほど、いとま特例はかえって運営を難しくさせることがあります。使わずに済むよう、採用時期と配置時期を前倒しで設計することが大切です。
シリーズ12回目の本稿では、採用前に犯罪事実確認が終わらないとき、何が起こるのか、いとま特例とは何か、そして小規模な障害福祉の現場で最も重い制約となるであろう「原則こどもと1対1にできない」という点を中心に見ていきます。
義務対象事業者(学校設置者等)
○ 障害児福祉サービス(自発・方デイ・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)
○ 障害児入所施設
認定対象事業者(民間教育保育等事業者)
○ (こどもに対してサービスを提供する)居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援
大原則|新規採用者は従事開始までに確認する
まず大前提を押さえます。新規採用・配置転換に係る犯罪事実確認の期限は、「内定・内示等から従事開始まで」です。つまり、採用が決まり、対象業務に入るまでの間に確認を終えるのが原則です。どこまで行っても、本法が施行された以上これが原点にして頂点です。
ここで注意したいのは、犯罪事実確認申請を行ってから回答が返ってくるまでの標準処理期間です。ガイドラインでは、日本国籍者で2週間~1か月程度、外国籍者で1か月~2か月程度と示されています。障害福祉事業者の感覚で言えば、「人が足りないから急いで採ったのに、、」という採用実務と、この制度は噛み合わないシーンも想定されます。今後はでき得る限り、需要・稼働を見越した採用計画が求められることになると言えます。
いとま特例とは何か|確認が間に合わないときの例外
では、確認が間に合わないときはどうするのでしょうか。そこで出てくるのが「いとま特例」です。これは、急な欠員や人事異動などのやむを得ない事情があり、従事開始までに犯罪事実確認を終えるいとまがない場合に限って使える例外です。その場合でも、確認を先送りにしてよいわけではなく、従事開始から3か月以内、一定の場合には6か月以内に犯罪事実確認を行わなければなりません。
一見、やむを得ない場合に猶予期間が与えられるだけの制度に見えますが、ここは注意が必要です。この「いとま特例」は、確認が終わっていない従業員を、やむを得ない理由があるからといって確認が完了した従業員と同列に扱うものではありません。確認が済むまでは、原則としてこどもと1対1にさせない等の措置をとる必要があります。つまり、いとま特例は「確認前でも通常どおり配置してよい」という意味ではなく、むしろ逆で、確認が終わっていない以上、特定性犯罪前科が確認されていない者として、慎重な運用を行ってほしいという行政からの要請です。
障害福祉の現場で悩ましいのは、そもそも人手不足だからこそ新規採用をしていることが多いからです。ところが、その新規採用者を入れても、即戦力としてこどもと1対1にできないのであれば、先輩職員や管理者が横につく、別の職員を同席させる、外から視認しやすい形にする、といった追加運用が必要になります。人が足りないから採ったのに、その人を単独戦力として使えない。。これが、小規模の障害福祉事業者にとって、いとま特例がかえって扱いにくい理由です。
それでも1対1になるのはどんなときか
もっとも、ガイドラインは一対一を絶対禁止しているわけではありません。いとま特例が適用されている対象業務従事者についても、例外的にやむを得ず1対1になることが認められる場合もあります。
一つは、業務内容の性質上、1対1でなければ適切な対応ができないと考えられる場合です。たとえば、利用者本人の心理的負担や障害の特性上、周囲に人がいると落ち着いて相談や支援が成立しないことがあります。あるいは、突発的な事件・事故への対応等、児童等の安全確保のために1対1で対応することやむ無し、と言えるような場面も想定できます。ガイドラインにおいても、緊急時の誘導や、一時的・突発的なおむつ替え、排せつ介助、着替え補助、体調不良児のケア等で、当該従事者以外に対応できる者がいない場合が例として示されています。
この様な状況においては、例外的にいとま特例下の従業員であっても、こどもへの1対1による支援が認められる余地があります。
なお、従事者1人が複数の児童を見ている場面でも、まわりにいるのが未就学児や障害児ばかりであれば、誰かに不自然な関わりがあっても、他の子どもがそれに気づけない、あるいは気づいても大人に説明できないことがあります。このような場合も、実質的には「1対1」とみなすとしています。つまり、形式上は1対1でなくても、他の子どもたちが見守り役にならないのであれば、安全確保の観点では1対1と同じ危険がある、という考え方です。
1対1だから、追加の人員を配置する。1対多ならその必要はない。という機械的な考えには親しまないものですので、注意が必要です。
まとめ
新規採用者の犯罪事実確認は、原則として従事開始までに終えておく必要があります。どうしても間に合わない場合にだけ、例外として「いとま特例」がありますが、その間も原則としてこどもと1対1にさせることはできません。しかも、形式上1対多であっても、周囲の子どもが異変に気づけない・説明できないなら、実質的には1対1とみなされます。結局のところ、いとま特例は安易に頼るべきものではなく、確認完了までの時間を見越して採用と配置を計画することが最も重要です。
【免責事項】
本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料その他の公表資料に基づく内容です。今後、通知、Q&A、事務手続マニュアル、各種ひな型等で具体的な運用が補われる可能性があります。