こども性暴力防止法で就業規則はどう変わるか|見直しのポイントを整理
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※本記事は、個別具体的な就業規則の法的有効性そのものを判定するものではありません。実際の就業規則の法的な有効性の確認については、社会保険労務士または弁護士へご相談ください。本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料、参考資料等の一次資料に基づく情報提供を目的としています。
お急ぎの方、ここだけは読んでください
- こども性暴力防止法に対応した就業規則、という観点で見た場合、新たに追加が必要となる点として、対象業務従事者の範囲、禁止行為、不適切な行為、報告義務、犯罪事実確認への協力義務、これらに反した場合の懲戒事由の整理、等が挙げられます。
- 就業規則参考例は公表されていますが、大事なのはその文言をそのまま写すことではありません。参考例が示している論点、つまり何を就業規則に定めておかないと法対応や現場運用で困るのかを理解し、自事業所の就業規則に自事業所の視点をもって漏れなく落とし込むことが重要です。
- 施行日を待ってから動くのでは遅く、ガイドラインは施行前からあらかじめ定めておくべき事項を整理しています。
以上のように、ガイドラインが求めているのは就業規則を通じて、教育・保育等を提供する場で、何をしてはならないのか、誰が対象なのか、問題が起きたときにどう報告し、どの手続に応じるのか、といった事業者の内部ルールを前もって整えておくことです。
シリーズ14回目の本稿では、こども性暴力防止法の施行に先立って、障害福祉サービス事業者が整備しておくべき「2026年12月25日以降の就業規則」の要点を見ていきます。
義務対象事業者(学校設置者等)
○ 障害児福祉サービス(自発・方デイ・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)
○ 障害児入所施設
認定対象事業者(民間教育保育等事業者)
○ (こどもに対してサービスを提供する)居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援
従来の就業規則のままでは足りない理由
これまでの就業規則であっても、服務規律や懲戒事由はもちろん記載があります。ですが、こども性暴力防止法の下では、それだけでは足りません。ガイドラインは、就業規則やその他服務規律等を定めた文書において:
- 「児童対象性暴力等」と「それにつながる不適切な行為」の範囲
- それらを行ってはならないこと
- それらの事案が生した場合に、また、これを理由として刑罰を科されたりした場合の速やかな報告行うこと
要するに、今までの就業規則が「一般的な職場ルール」だったとすると、これからはそこにこども保護の観点を織り込んだ内部ルールを追加する必要がある、ということです。
就業規則に新しく入れておくべき観点
第一に、誰が対象業務従事者なのかを整理することです。こどもと接する全職員が一律に対象とは限りませんが、支配性・継続性・閉鎖性という考え方を踏まえて、どの職種やどの業務が対象になり得るのかを事業所ごとに決める必要があります。契約社員、パート、アルバイト、再雇用者なども、要件を満たせば全てが本法の対象に入り得ます。
第二に、禁止する行為の中身です。法上の児童対象性暴力等だけでなく、それにつながる不適切な行為も整理が必要です。ここが抽象的なままでは「規則」としては弱く、各施設・事業の性質や、利用するこどもの年齢・発達の状況に応じて、可能な限り具体的な内容を記載する必要があります。障害児通所支援と、障害児に対する訪問系サービスとでは、注意すべき場面が同じとは限らないため、熟考し、場合によっては職員を巻き込んで話し合いの場を持ち、定めます。またここで記された禁止行為は、懲戒事由にもつながっていきます。
第三に、報告義務です。問題行為をしてはならない、だけで終わりではありません。そうした行為を行った場合や、それを理由として刑罰を科された場合は、速やかに報告することまで内部ルールに入れておくことが想定されています。
第四に、犯罪事実確認の手続に応じる義務です。就業規則参考例でも、職員は法人の指示に従い、犯罪事実確認に必要な手続等に対応しなければならない、とされています。これは単なるお願いではなく、内部ルールとして位置づける必要があるということです。
まとめ
こども性暴力防止法への対応においては、従来の就業規則では不十分であり、対象業務従事者の範囲や禁止行為、報告義務、犯罪事実確認への協力義務といった制度上不可欠な論点をあらかじめ就業規則に落とし込んでおく必要があります。単に参考例を転記するのではなく、自事業所の実態に合わせてこれらの要素を漏れなく反映させることが、実効性のある規程づくりには欠かせません。就業規則の見直しは施行後に着手するものではなく、施行前からの重要な準備事項として計画的に進めておくことが重要です。
【免責事項】
本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料その他の公表資料に基づく内容です。今後、通知、Q&A、事務手続マニュアル、各種ひな型等で具体的な運用が補われる可能性があります。