犯罪事実確認で「該当あり」となった場合、事業者はどう動くべきか
お急ぎの方、ここだけは読んでください
- 犯罪事実確認の結果、「特定性犯罪事実に該当あり」となった場合でも、即座にその情報が事業者もたらされるわけではありません。まず本人に通知され、訂正請求期間が設けられます。
- 本人が訂正請求をしないまま2週間が経過した場合、または訂正請求をしない意思表示をした場合には、事業者へその旨確認の結果が伝達されます。
- 事業者が結果を受け取った後も、それだけで一律に解雇という話ではありません。まずは原則として、対象業務に従事させない方向で防止措置を検討することになります。
- もっとも、事前に誓約書や就業規則を整備していた場合には、後から判明した前科は「重要な経歴詐称」として問題になります。現職者なら懲戒、新規採用者なら内定取消しや試用期間中の解雇が論点になります。
シリーズ15回目の本稿では、犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合に、障害福祉サービス事業者がどう動くべきかを整理します。ここは前回の記事で解説した、誓約書や就業規則等の内規をこども性暴力防止法に合わせてアップデートしていたかどうか、が多分に影響する論点です。
義務対象事業者(学校設置者等)
○ 障害児福祉サービス(自発・方デイ・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)
○ 障害児入所施設
認定対象事業者(民間教育保育等事業者)
○ (こどもに対してサービスを提供する)居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援
事業者に結果が届くまでの流れ
まず知っておくべきは、確認の対象となった従事者について特定性犯罪前科がある場合でも、事業者が最初にそれを知るわけではないという点です。事業者が先に結果を見て本人へ伝える仕組みではなく、まず申請従事者本人に対して犯罪事実確認書の記載内容が通知されます。通知後2週間は、訂正請求や中止要請を行うことができる期間とされており、その間は事業者へ確認結果は交付されません。
この2週間が実務上重要なのは、単に訂正の機会だからだけではありません。本人がその間に内定辞退や自主退職等を申し出て、犯罪事実確認を続ける必要がなくなる場合があるからです。ガイドラインは、そのような場合には申請従事者が事業者に申し出て交付申請の取下げを要請し、あわせてこども家庭庁に中止要請を行うことができるとしています。施行資料でも、訂正請求期間中に本人が内定辞退すれば、犯罪事実確認書は事業者に交付されないとされています。
そのため、犯罪事実確認で「該当あり」となったとしても、事業者が必ずその結果を目にするとは限りません。本人が辞退せず、訂正請求や中止要請もされなかった場合には、その後こども家庭庁から事業者へ犯罪事実確認書が交付されます。
「該当あり」の後に求められること
事業者が犯罪事実確認書を受け取った後は、ただ保管して終わりではありません。犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合、通常、事業者はそのことをもって児童対象性暴力につながる「おそれ」があると認めます。そのため、原則として、当該者をこどもと接する対象業務に従事させない方向で防止措置を検討することになります。
そのうえで、事業者として具体的な人事対応を考えなければならない場合には、新規採用者と現職者を分けて考える必要があります。新規採用者については、誓約書、採用条件の明示、内定取消事由や試用期間中の解約事由の整備が効いてきますが、現職者はそこまで単純ではありません。こども家庭庁の一次資料群においては、事前に書面確認等がされていれば現職者でも「重要な経歴詐称」として懲戒事由に該当し得ると整理していますが、施行前の現職者に改めて誓約書を求めることの法的有効性までは、公表資料だけでは判断し切れません。この点に不安がある場合は、弁護士または社会保険労務士に相談した上で進めるのが安全です
それは誤解です
考えられる誤解の一つが、「該当あり」と分かった瞬間に、その従事者や採用内定者に対して何でもできる、と思ってしまうことです。ですが、防止措置はこどもの安全確保のために求められる制度上の措置であっても、雇用上の対応としては労働法制に沿って行う必要があります。想定されるのは、内定取消し、試用期間中の解約、出向・転籍、配置転換などですが、だからといって直ちに普通解雇や懲戒解雇ができるわけではありません。
そのため、採用前の確認や就業規則の整備が重要になります。ここに手落ちがあると、現実に取り得る手段は限られてきます。特に、新規採用者や試用期間中の者への対応は、前回扱った募集要項、誓約書、内定通知書、就業規則の整備と深くつながっています。
まとめ
犯罪事実確認で「該当あり」となっても、事業者が直ちにその結果を知るわけではなく、本人への通知や訂正請求・中止要請の期間を経て初めて結果が届きます。
その後の対応も一律ではなく、本人の辞退で終わる場合もあれば、防止措置や人事対応が必要になる場合もあります。
だからこそ、誓約書、募集要項、内定通知書、就業規則の整備が実務上大きな意味を持ちます。
【免責事項】
本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料その他の公表資料に基づく内容です。今後、通知、Q&A、事務手続マニュアル、各種ひな型等で具体的な運用が補われる可能性があります。