施設・事業所環境から考える効果的な未然防止のあり方とは
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お急ぎの方、ここだけは読んでください
- 施設・事業所環境の整備というと真っ先に監視カメラのことを思い出しますが、それだけにとどまる話ではありません。周囲から見えにくい場所、密室化しやすい利用シーン、1対1の関係が定常的に発生する場面を事業所としてどう扱うか、という観点で支援環境を見直す話です。。
- 基本的に、ガイドラインは他の児童や従事者の目が行き届きにくい環境を可能な限り減らしていくことを重視しています。つまり各事業所には環境整備を通じて、性暴力等が起きにくい状態を平時から作るための努力を行ってほしい、というメッセージです。
- 設備を充実させることはもちろんですが、同様に、設備と運用をどう組み合わせ、いかにこれらの効果を発揮させるか、を検討することも大切と言えます。
- 個別支援、送迎、着替え、トイレ、入浴介助に近い場面など、事業所ごとに危ない場面を洗い出す必要があります。
障害児(者)福祉は、その性質上一対一のサービス提供を行う場面が相当数想定されます。ただ、「うちは個別対応が多い業態だから対応は無理だ」で終わらせず、たとえ1対1になる場面でも、情報共有や見守りの工夫など、歯止めをかける設計を考えることが求められています。
シリーズ17回目の本稿では、安全確保措置のうち「未然防止」のテーマから「施設・事業所環境の整備」を見ていきます。ここで大事なのは、環境整備を設備の話に矮小化しないことです。こども性暴力防止法が求めているのは、性暴力等が起こった後の証拠保全(映像・音声・記録等)だけではなく、そもそも起こりにくい環境を平時から作ることです。
ガイドラインより抜粋
施設・事業所環境の整備は、なぜ未然防止になるのか
こどもへの性暴力は、支配性、継続性、閉鎖性のある関係の中で起こりやすいというのが、この制度全体の前提です。環境整備が重要なのは、このうち特に「閉鎖性」に直結する要素を含んでいるからです。人目につきにくい場所や、特定の職員と利用児童が2人きりになりやすい場面、周囲から様子が見えにくい部屋の配置やサービス提供の動線が多いほど、そのおそれは高まります。
性暴力を起こしにくくし、仮に誰かが逸脱しようとしても、その行動に歯止めがかかる状態を作る方法論として環境整備があります。カメラはそのための一つの手段です。
なお、監視カメラについては、その設置場所、映像に収めるべき画角、データの保存方法、データの保存・上書き周期、監視カメラの収容ネットワーク、データ閲覧権限等々、それ一つが論点になるほど多数の検討項目を含んでいます。こちらは、ICT技術に詳しい人間を頼るなど、適切なモデルの選定と設置を行ってください。
密室を避け、見守りやすい環境をどう作るか
ガイドライン等の公開資料を踏まえると、事業者がまず取り組むべき点は、密室化の回避と見えやすさの確保です。たとえば、個別支援室、相談室、送迎車内、更衣補助、トイレ介助や入浴介助などの場面、放課後や休日の(他の利用者の少ない)延長・通常外支援などは、他者の目が届きにくくなりやすいところです。
例えば注意すべき具体的な例として、不必要に密室で2人きりになろうとすること、不必要に1対1の状況で車に乗せること、保護者不在時に児童の自宅で2人きりになることなどが挙げられています。環境整備とは、こうした状況が自然に生まれにくいように業務や空間を設計することでもあります。
もちろん、不必要に1対1になる状況を避けるべきとしつつ、やむを得ない場面があることも認めています。その場合でも、組織的に情報共有しながら行うなど、歯止めをかけるルールを定めて運用することが求められるとしています。つまり、環境整備とは「1対1を絶対禁止する」ことではなく、「1対1にならざるを得ない場面にどう歯止めをかけるか」を考えることでもあると言えます。
「設備を入れれば終わり」ではない|運用とセットで考える
すでに述べた通り、環境整備はハードだけの話ではないということです。たとえば、カメラを設置すること自体には意味がありますが、死角が多ければ十分ではありません。個別支援室をガラス張りにすることにも意味はありますが、いつも同じ職員が利用児童と2人きりで入る運用になっているなら、それだけで安心とはいえません。
ポイントは、ハードウェアは未然防止の道具であり、運用(ソフトウェア)はこれらハードをどう使うかということです。道具も使い方次第です。ハードで埋めきれない隙間を人間の運用・知恵でカバーする、マンパワーでやり切るのは負荷の高い作業を、ハードに任せる。そのような相互補完関係を考えたいです。
まとめ
施設・事業所環境の整備は、監視カメラの設置だけを指すものではなく、密室化しやすい場面や周囲の目が届きにくい状況をどう減らすかという未然防止の取組の一つです。
障害福祉の現場では、個別支援、送迎、更衣、トイレ、入浴介助に近い場面など、1対1になりやすい場面を避けきれないこともあります。
だからこそ、設備を入れるかどうかだけで終わらせず、設備と運用をどう組み合わせて歯止めをかけるかを事業所ごとに考えることが重要です。
【免責事項】
本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料その他の公表資料に基づく内容です。今後、通知、Q&A、事務手続マニュアル、各種ひな型等で具体的な運用が補われる可能性があります。