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独習 こども性暴力防止法 | 第十八回 職員研修や保護者等への啓発活動という、もう一つの「未然防止」について考える

員研修や保護者等への啓発活動という、もう一つの「未然防止」について考える


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お急ぎの方、ここだけは読んでください

  • 研修や教育啓発活動が意味するところは、職員に「何が危ないか」「何が不適切か」というレッドラインがどこにあるのか?を意識させ、また、児童や保護者に「嫌なことは嫌と言ってよい」「相談してよい」という心の拠り所の存在を伝える、そういった働きかけを通じて、精神的な未然防止の柱を打ち立てることを意味します。
  • そのため、従事者研修で大切なのは、知識を得るだけではなく、日々の支援のどんなシーンにリスクが潜むかを自分事として理解させることです。標準研修や要点研修に加え、必要に応じて独自の研修を行い、自分たちの日々の振り返りも必要になってきます。
  • 児童や保護者への教育啓発も重要です。特に、児童は発達段階や特性によって被害を被害と認識しにくい場合があるため、年齢や特性に応じた伝え方が必要です。特に障害福祉の現場では、一般的な説明をそのまま流すだけでは足りない場面も想定されますので、短文、イラスト、感覚を使った説明など、伝え方を工夫する必要があります。
  • また、これらの働きかけはどこかのタイミングで一度実施して終わり、ではなく、入職時、日々の振り返り、保護者との日常的な接点の中で、繰り返し理解を定着させることが重要です。

シリーズ18回目の本稿では、未然防止のうち「従事者研修」と「児童等・保護者への教育啓発」を扱います。前回は、施設・事業所環境というハード面・ルール面を見てきましたが、今回は、実際に人が理解し、こども性暴力防止への心構えをどう育てていくか、そしてその理解を事業所全体の未然防止にどうつなげるかを考えます。

以下、こども性暴力防止に関係する障害児(者)福祉サービス事業者の区分けを再掲しておきます。

義務対象事業者(学校設置者等)

 ○ 障害児福祉サービス(自発・方デイ・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)
 ○ 障害児入所施設

認定対象事業者(民間教育保育等事業者)

 ○ (こどもに対してサービスを提供する)居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援

従事者研修で伝えるべきことは何か

ガイドライン原文では様々なことが詳細に記述されていますが、実務の観点から3つの軸に整理します。

一つ目は、何が児童対象性暴力等で、何が不適切な行為なのかを理解することです。ここが曖昧だと、現場では「これは大丈夫なのか」「これはやり過ぎなのか」を職員が個人判断で決めることになり、結局ルールがないのと同じです。特に、障害福祉の現場では、身体接触や個別対応が必要な場面もあるため、必要な支援と不適切な行為の区別を共通理解として持つことが重要です。

二つ目は、日々の支援のどこにリスクがあるかを理解することです。送迎、個別支援、更衣、トイレ、入浴介助に近い場面など、現場特有のリスクは、一般論を当てはめようとしても無理が生じます。ガイドラインは標準研修や要点研修に加え、独自研修で追加・補足的事項を扱う工夫も可能としています。つまり、障害福祉のサービス提供を念頭に置いた研修であることが望まれます。

三つ目は、疑いを見聞きしたときにどう動くかを理解することです。研修は、性暴力や不適切な行為を知識として覚えるためだけではありません。報告、初動、情報管理、被害児童等への配慮まで含めて、いざという時に何をすべきかを理解させる必要があります。

児童と保護者には、何をどう伝えるのか

児童等への教育・啓発は、ガイドラインでも重視されているトピックです。理由は単純で、児童は発達段階や特性により、被害を被害と認識できないことがあり、そのことが加害や見逃しにつながるからです。このため、児童が被害者や傍観者にならないよう、発達段階等に応じた教育・啓発が重要とされています。

つまり実務においては、児童に対して少なくとも、嫌なことは嫌と言ってよいこと、相談してよい相手がいること、1人で抱え込まなくてよいことがきちんと伝わっているかが重要です。保護者に対しては、事業所がどんなルールで未然防止に取り組むのか、気になる発言や様子があったときの相談先はどこか、うわさを広げないことがなぜ重要なのかを伝える必要があります。

障害福祉の現場では、伝え方の工夫が必要になる

横断指針(令和7年4月に公表された、こども性暴力防止法成立を受けての指針)では、知的障害や発達障害等のある児童について、教育・啓発の内容そのものを別にする必要はないが、障害の内容に応じて丁寧に伝え、伝え方を工夫することが有効だとしています。たとえば、短文で説明する、言葉だけでなくイラストや写真を使う、否定から入るのではなく、まず心地よく安心な状態を学ぶ、といった工夫です。

また、感覚・感触を共有する素材を使って、「心地よいか/嫌か」を確認しながら理解を促すという手法や、場合によって支援者(従事者)を変更できることを児童が認識することが有効だという記述もあります。障害のある児童は、支援者に逆らいにくいなどの脆弱性を持つことがあるため、伝える内容だけでなく、伝わる形にすることが重要です。ここは、一般向けの説明資料をそのまま読ませて済ませる部分ではありません。

まとめ

職員研修や児童・保護者への教育啓発は、未然防止を人の理解と行動に落とし込むための重要な取組です。
職員には、何が危険で、どこにリスクがあり、疑いが出たときにどう動くべきかを理解させる必要があります。
また、児童や保護者には、嫌なことは嫌と言ってよいこと、相談先があること、1人で抱え込まなくてよいことを、障害特性や発達段階に応じた形で伝えることが重要です。




【免責事項】

本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料その他の公表資料に基づく内容です。今後、通知、Q&A、事務手続マニュアル、各種ひな型等で具体的な運用が補われる可能性があります。