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独習 こども性暴力防止法 | 第二十回 調査と調査後対応をどう進めるか|障害児(者)福祉事業者の視点より

調査と調査後対応をどう進めるか|障害児(者)福祉事業者の視点より


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お急ぎの方、ここだけは読んでください

  • 児童対象性暴力あるは不適切な行為の疑いを把握した場合、初期対応の次に行うのが調査です。しかし、調査は「誰を処分するか」をこの段階で決めるために行うというより、児童対象性暴力等があったと合理的に認められるかを判断するための過程です。まず客観証拠を保全し、必要な聴き取りを行い、その時点で集まった情報で評価します。
  • 聴き取りは、たくさん聞けばよいわけではありません。児童への繰り返しの聴き取りは、二次被害や記憶の汚染につながり得るため、犯罪が疑われる場合や判断に迷う場合は、警察や専門家と連携しながら進める必要があります。
  • 調査の後に行うべきは、防止措置だけではありません。事案に対する対応方針を決め、被害児童等とその保護者への支援、必要に応じた他の児童や保護者・職員への対応、そして再発防止策の検討まで行います。
  • 障害福祉施設等では、こども性暴力防止法に基づく対応に加えて、障害者虐待防止法に基づく対応も並行して整理する必要があります。

性暴力があったと評価できなかった場合でも、そこで終わりではありません。疑いが生じた事実自体を重く受け止め、支援のあり方の見直し、死角の解消、再度の研修を通じた制度理解の徹底など、再発防止を検討する必要があります。

シリーズ20回目の本稿では、初期対応の後に続く「調査」と「調査を踏まえた対応」を扱います。前回は、疑いが出た直後にまず何を守るかを見ましたが、今回はその後に何を確認し、どう評価し、その結果をどう支援や再発防止につなげるか、という一連の流れを見ます。

以下、こども性暴力防止に関係する障害児(者)福祉サービス事業者の区分けを再掲しておきます。

義務対象事業者(学校設置者等)

 ○ 障害児福祉サービス(自発・方デイ・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援)
 ○ 障害児入所施設

認定対象事業者(民間教育保育等事業者)

 ○ (こどもに対してサービスを提供する)居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援

調査は何のために行うのか

調査の目的は、児童対象性暴力等が行われたと合理的に認められるかどうかを判断することです。ガイドラインは、十分な情報が集まった場合や、これ以上の情報収集が困難になった場合には、その時点で把握できている情報を基に評価するとしています。つまり、延々と調べ続けるのではなく、集まった情報の質と量を踏まえて判断するということです。

また横断指針は、事実確認に際しては被害児童等への配慮だけでなく、加害が疑われる者に対しても公正・中立な対応が求められるとしています。ここは実務上かなり重要です。被害児童等への保護・支援を最優先にしつつも、評価の前段階で「黒」と決めつけることまでは求めていません。

何を確認するのか|証拠保全と聴き取り

調査の中身を大きく分けると、証拠保全と聴き取りです。客観証拠としては、防犯カメラ、写真・録音、SNSやメッセージアプリの履歴、勤務記録、第三者の目撃情報などが考えられます。障害福祉の現場では、送迎や個別支援、更衣や排泄・入浴に近い場面の記録、施設内の死角や動線も、評価の手掛かりになることがあります。

ただし、聴き取りは慎重に行う必要があります。なぜなら、繰り返しの聴き取りによって二次被害や記憶の汚染が生じ、司法手続における証言の有効性を失わせることもあり得るからです。犯罪が疑われる場合や、その疑いがある場合には、児童への聴き取りは最低限にとどめ、速やかに警察へ通報・相談することを第一に検討すると整理しています。聴き取りが必要な場合でも、内容を適切に記録し、児童が不利益を受けないことを伝えた上で進めることが重要です。

事実をどう評価し、その後どう決めるのか

事実の有無の評価は、客観証拠、児童や保護者の申告、加害が疑われる者の供述、第三者の証言などがどこまで整合するかを見ながら行います。ガイドラインは、加害が疑われる者の供述と客観証拠が整合する場合、児童や保護者の申告と客観証拠・第三者証言が整合し、その信用性が認められる場合などを「合理的に認められる場合」の例として挙げています。発達段階や特性によって児童本人から明確な申告が得られなくても、自己申告や映像等から事実を評価できる場合がある、という点も重要です。

そのうえで、事実があったと合理的に判断された場合には、速やかに対応方針を決めます。ここでいう対応方針とは、防止措置だけではありません。被害児童等ができるだけ日常を取り戻せるようにすること、身体的・精神的苦痛へのケア、二次被害の防止、保護者への説明まで等、多岐にわたります。また、独善的にならず、被害児童等やその保護者の意向を可能な限り確認しながら進めます。

障害福祉の現場では、調査後対応を二重で見る必要がある

障害福祉の現場では、こども性暴力防止法以外にも意識すべき規範があります。障害福祉事業者は、こども性暴力防止法のフローに沿って調査・評価・対応を進めつつ、同時に、障害者虐待防止法上必要となる通報や報告その他の対応も落とさずに行う必要がある、ということです。

特に障害福祉の現場で意識しておきたいのは、こども性暴力防止法の調査結果にかかわらず、障害者虐待防止法側では都道府県児童福祉審議会等への報告や、その後の公表まで見据えた流れが置かれている点です。こども性暴力防止法のフローだけを見ていると見落としやすい部分ですが、障害福祉の現場で発生した事案では、こうした既存の虐待対応法制に基づく対応も並行して進むことになります。














まとめ

調査は、誰かを処分するために急いで結論を出す作業ではなく、客観証拠と適切な聴き取りを通じて、児童対象性暴力等があったと合理的に認められるかを見極めるための過程です。
その後は、防止措置だけで終わらず、被害児童等への支援、保護者への説明、再発防止までを一体として進める必要があります。
特に障害福祉の現場では、こども性暴力防止法のフローだけでなく、障害者虐待防止法に基づく通報・報告等の流れも並行して意識しておくことが重要です。





【免責事項】

本記事は、現時点で公表されているガイドライン、施行資料その他の公表資料に基づく内容です。今後、通知、Q&A、事務手続マニュアル、各種ひな型等で具体的な運用が補われる可能性があります。