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独習 運営指導 クラスター08「個別支援計画・アセスメント」|4 家族の希望「だけ」で計画を作らない|本人の意思・選好をどう記録に残すか

営指導 クラスター08「個別支援計画・アセスメント」|4 家族の希望だけで計画を作らない|本人の意思・選好をどう記録に残すか


個別支援計画を作成する際、本人の意思を確認することは何より重要です。しかし実務の現場では、本人が言葉で説明することが難しい、判断に時間がかかる、あるいは場面によって反応が変わるといった理由から、つい家族や支援者の意向がそのまま計画に反映されてしまうケースが少なくありません。

もちろん、家族や支援者から得られる情報は非常に大切です。日頃の様子や好き嫌い、生活歴、体調の変化などは、本人の真意をひも解くための貴重な手がかりとなります。ただし、それはあくまで「本人を理解するための材料」であり、本人自身の意思そのものではない、という視点を忘れてはいけません。

クラスター08「個別支援計画・アセスメント」第4回目の本稿では、本人が自ら意思を決定することに困難を抱える場合に、本人の意思・選好・判断能力をどう把握し、どのように記録へ残すかを整理します。特に、家族の希望や支援者の判断と、本人の意思・選好を分けて説明できるかが中心になります。

本稿でいう「クラスター」とは、運営指導で示される多数の着眼点を、中原太事務所が実務上の観点から整理・分類した独自の区分です(行政の公式用語ではありません)。着眼点を単に並べるのではなく、事業所運営のどの場面で意識されるかを基準に、関連項目をまとめています。

行政の確認ロジックは「書類→記録→運用」です

行政が行う確認のロジックは、一貫して「書類→記録→運用」の順序です。まず最初に確認されるのは「書類」の整備状況です。意思決定支援に関する基本方針(国のガイドラインもあります)があるか。アセスメント様式に本人の意思や選好、判断能力を把握する欄が設けられているか。家族や代弁者が関与する場合の確認ルールが整っているか、などがチェックされます。

次に見られるのが「記録」の実態です。本人に対して、具体的にどのような方法で意思確認を行ったのか。言葉だけでなく、表情、行動、拒否反応、選好、そして過去の生活歴などをどう整理したのか。家族の意向と本人の反応を分けて記録しているかが、極めて重要な評価ポイントとなります。前述のガイドラインでも、本人の意思確認や選好の推定、生活史の把握が強く重視されています。

最後が「運用」の実効性です。一度の面談で意思が確認できなかったからといって、そこで諦めていないか。複数の場面で本人の反応を丁寧に確かめているか。支援者間で情報を持ち寄り、家族の意向だけで計画を決めない仕組みができているか。ここまで説明できて初めて、意思決定支援が計画作成の中で正しく機能していると認められます。

つまずきやすい点:家族・支援者の意向と本人の意思・選好が分けて記録されていない

何が問題か

現場で問題となるのは、本人が意思表示しにくい場面において、家族や支援者の意向がそのまま「本人の希望」として扱われてしまう状態です。たとえば、家族の「本人はこう望んでいるはずだ」という言葉を、本人の確認プロセスを経ずに計画へ反映してしまうと、本人自身の意思をどう捉えたのかが見えなくなってしまいます。

また、支援者にとって安全で合理的に見える選択が、必ずしも本人にとっての最善とは限りません。本人が言葉で説明できない場合でも、表情や行動、ちょっとした拒否反応、日々の好み、過去の暮らしぶりなどから、本人の意思を丁寧に汲み取ろうとした「試行錯誤の経過」が必要不可欠なのです。

なぜ問題か

行政が注視しているのは、家族や支援者が「よかれと思って判断したかどうか」ではありません。本人の意思・選好・判断能力をいかに丁寧に把握しようとし、それをどう計画に落とし込んだかという「プロセス」です。

厚労省のガイドラインでは、意思決定支援の本質を「本人の意思が反映された生活を送れるよう、可能な限り本人が決定できるよう支援し、意思や選好を推定すること」と定義しています。たとえ推定が困難な場合でも、安易に周囲が肩代わりするのではなく、最後の手段として「本人の最善の利益」を検討する流れが求められているのです。

ありがちな誤解(NG解釈)

「本人が話せないので、家族の希望を本人の希望として書けばよいだろう」

「その場で答えが返ってこなかったので、意思確認は不可と記録しておけば十分だ」

「支援者から見て安全な内容なら、それが本人のためになると判断して問題ないはずだ」

――こうした認識のままでは、運営指導の場で「本人中心の計画」であることを十分に説明できません。行政が評価するのは、本人に分かりやすく説明する工夫、選択肢の提示、絵カードや具体物の活用、そして複数の場面での観察といった積み重ねです。

そのまま使えるチェックリスト(書類/記録/運用)

運営指導の場で確認を求められても慌てないよう、次の点がそろっているかを確認してください。

書類

  • 意思決定支援に関する基本方針が策定されている
  • アセスメント様式に本人の意思・選好を記載する欄がある
  • 判断能力や意思表示の具体的な方法を確認できる欄がある
  • 家族や代弁者が関与する場合の確認ルールが明確である
  • 本人の意思と家族の意向を書き分けられる様式になっている

記録

  • 本人への具体的な説明方法(工夫)が記録されている
  • 本人の表情、行動、拒否反応、選好が具体的に記されている
  • 家族の意向と本人の反応が区別して記録されている
  • 支援者間で検討し、合意形成を図った内容が残っている
  • 本人の意思・選好を推定した際の「根拠」が明確である

運用

  • 一度きりの面談だけで結論を出していない
  • 本人が意思表示をしやすいよう環境やツールを工夫している
  • 複数の場面、異なる時間帯で本人の反応を確認している
  • 支援者側の価値観や都合だけで計画内容を決めていない
  • 計画に反映させる前に関係者間で内容の再確認を行っている

まとめ

意思決定支援において大切なのは、本人がはっきりと言葉にできるかどうかだけではありません。何を好み、何を避け、どのような場面で安心し、どんな選択に反応を示すのか。そうした情報を丁寧に収集し、周囲の意向とは切り分けて整理することが求められます。

個別支援計画を「本人中心のもの」として自信を持って説明するには、「家族がそう言ったから」「支援者が必要だと判断したから」という理由だけでは不十分です。本人の意思を確認しようとした経過、その際の反応、そして意思を推定した根拠。これらをしっかりと記録に残すことで、計画の内容はより納得感のあるものとなります。




【免責事項】

本稿は、運営指導で確認されやすいポイントを、実務の目線で整理したものです。制度の取扱いは年度や自治体、事業所の状況によって変わることがあるため、最終的には最新の公式資料とあわせてご確認ください。また個別具体的な判断において迷う点や不安が残る場合は、状況を伺ったうえで整理のお手伝いもできますので、お気軽にご相談ください。