運営指導 クラスター08「個別支援計画・アセスメント」|5 アセスメント面接の記録不足|運営指導で確認される趣旨説明と理解取得
個別支援計画を作成する前には、本人やご家族、保護者の状況を丁寧に把握するためのアセスメントが欠かせません。ただし、運営指導において確認されるのは、単に「アセスメントを行ったかどうか」だけではありません。アセスメントに際して面接を行い、その「趣旨」をきちんと説明し、相手が納得したことを記録として説明できるかどうかが極めて重要になります。
実際の現場では、面接自体は行っているものの、記録には「面接済み」「聞き取り実施」といった一言しか残っていないケースが見受けられます。これでは、誰が、いつ、どこで、何を説明し、どのように理解を確認したのかというプロセスが見えてきません。特に障害児支援の現場では、保護者への説明内容と、お子さん本人へのアプローチや反応の記録が混同されてしまうこともあるため、注意が必要です。
クラスター08「個別支援計画・アセスメント」第5回目の本稿では、アセスメント面接と、その前提となる趣旨説明・理解取得の記録について整理します。面接の内容そのものだけでなく、面接をどのような目的で行い、本人や保護者等にどう伝えたのかを、書類・記録・運用の流れで確認します。
本稿でいう「クラスター」とは、運営指導で示される多数の着眼点を、中原太事務所が実務上の観点から整理・分類した独自の区分です(行政の公式用語ではありません)。着眼点を単に並べるのではなく、事業所運営のどの場面で意識されるかを基準に、関連項目をまとめています。
行政の確認ロジックは「書類→記録→運用」です
行政がまずチェックするのは「書類」の整備状況です。アセスメント面接の手順がルール化されているか、面接前に説明すべき項目が整理されているか、あるいは本人・家族向けの説明資料やチェックリストが用意されているかが見られます。面接を担当者の経験則だけに頼るのではなく、組織として何を伝え、何を確認するのかを明確にしておく必要があります。
次に見られるのが「記録」の実態です。実際のケースにおいて、面接の日時、参加者、場所、方法に加え、どのような説明を行い、相手が理解した様子がどうだったのかが記録に残っているかが問われます。厚生労働省の指導監査資料でも、児童発達支援管理責任者が保護者や障害児に面接し、その趣旨を十分に説明して理解を得ているかどうかが確認項目として示されており、その証拠資料として面接記録が挙げられています。
最後が「運用」の定着度です。面接が計画作成前の「形だけの聞き取り」で終わっていないか。面接の前に趣旨を説明する流れが、実際の現場で機能しているか。サビ管・児発管等が、面接記録の有無だけでなく、説明内容や理解確認の欄まで点検しているか。ここまで一貫して説明できて初めて、アセスメント面接が計画作成の正当な前提として認められます。
つまずきやすい点:面接はしているが、趣旨説明と理解取得の記録が残っていない
何が問題か
現場で課題になりやすいのは、本人や保護者と面接はしているものの、「面接の趣旨を説明したこと」や「相手が納得したこと」が記録から読み取れない状態です。面接記録に「聞き取り実施」とだけ書かれていても、それが何のための面接だったのか、計画作成の根拠となるアセスメントとして行われたのかが、第三者には伝わりません。
また、障害児支援においては、保護者への説明は記録されていても、お子さん本人にどう関わったかが抜け落ちていることがあります。年齢や発達の段階によって説明の方法は変わりますが、本人にどう伝え、どのような反応があったのかを書き留めておくことが、支援の妥当性を示す鍵となります。
なぜ問題か
行政が確認したいのは、単なる情報の収集能力ではありません。アセスメントを行うにあたって面接の目的をしっかり伝え、本人の理解を得た上で情報を把握しているかという「手続きの適正さ」です。
行政の資料においても個別支援計画の作成手順として、アセスメントから原案作成、会議、説明・同意、交付へと進む流れが明示されています。つまり、アセスメントは計画を作った後に(遡って)形式を整えるものではなく、計画作成の出発点にある重要な手続きなのです。
ありがちな誤解(NG解釈)
「面接はしているので、趣旨説明までは細かく記録しなくてよいだろう」
「アセスメントシートがあるので、面接記録は別に残さなくてもよいだろう」
「保護者に説明していれば、障害児本人への説明経過までは不要だろう」
――こうした認識のままでは、運営指導の場で、アセスメント面接の手続を十分に説明できません。行政発出の個別支援計画作成資料でも、面接前に趣旨を十分説明して理解してもらうことが明示されています。面接は単なる雑談や聞き取りではなく、計画作成のために必要なアセスメント手続として位置付けることが大切です。
そのまま使えるチェックリスト(書類/記録/運用)
運営指導の場で確認を求められても慌てないよう、次の点がそろっているかを確認してください。
書類
- アセスメント面接の手順書がある
- 面接前に説明する内容が整理されている
- 本人・家族・保護者向けの説明資料がある
- 面接実施チェックリストがある
- 障害児本人への説明方法を検討できる様式がある
記録
- 面接日時、場所、方法が記録されている
- 面接参加者、説明者、記録者が分かる
- 面接の趣旨を説明した内容が残っている
- 理解を確認した方法や相手の反応が記録されている
- 保護者への説明と障害児本人への説明経過を分けて確認できる
運用
- 計画原案作成前に面接を実施している
- 面接前に趣旨説明を行う流れが定着している
- 面接記録をサビ管・児発管等が確認している
- 「聞き取り」と「アセスメント面接」を混同していない
- 計画説明・同意の記録とアセスメント面接の記録を分けて管理している
まとめ
アセスメント面接において大切なのは、「面接をした」という事実だけではありません。何のための面接なのかを丁寧に説明し、本人や保護者がその趣旨を理解した上で情報を共有したことを、客観的な記録で示せるかどうかです。
個別支援計画の妥当性を説明するためには、その前提となるアセスメントの流れが可視化されている必要があります。「誰に、いつ、どこで、何を話し、どう納得を得たのか」。この基本を日頃から記録に留めておくことで、運営指導の場でも、計画作成のスタート地点から自信を持って説明できるようになります。
【免責事項】
本稿は、運営指導で確認されやすいポイントを、実務の目線で整理したものです。制度の取扱いは年度や自治体、事業所の状況によって変わることがあるため、最終的には最新の公式資料とあわせてご確認ください。また個別具体的な判断において迷う点や不安が残る場合は、状況を伺ったうえで整理のお手伝いもできますので、お気軽にご相談ください。