運営指導 クラスター13「情報公開・秘密保持・個人情報」|3 支援会議や関係機関に情報を提供する前の事前同意確認
前回の第2回では、職員による情報漏えいを防ぐための対策として、秘密保持誓約書の締結、紙資料や端末の適切な管理、そして退職者や異動者のアカウント停止手続きなどについて解説いたしました。しかし、職員が意図的に情報を外部へ持ち出さなくとも、日常的な業務における支援会議の開催、関係機関との連携、あるいは他機関からの照会に対する回答など、利用者様やそのご家族の個人情報を提供する場面は頻繁に発生します。
障害福祉や障害児支援の現場においては、相談支援事業所、医療機関、学校、保育所、行政機関、および他のサービス事業者などと緊密に連携しながら支援を進めることが少なくありません。適切な支援を展開するためには必要な情報共有が不可欠である一方で、「連携のためである」という理由だけで、自由な情報の提供が自動的に許されるわけではありません。
実務において特に発生しやすい事例は、利用開始時に取得した同意書では実際の会議参加者や連携先を十分に網羅できていないにもかかわらず、支援会議の場で利用者の生活歴、家族状況、医療情報、あるいは支援上の課題などを広範囲に共有してしまう場面です。また、学校や医療機関、行政機関などから急ぎの照会を受けた際に、担当職員がその場で十分な確認を行わずに回答してしまうことも見受けられます。
クラスター13「情報公開・秘密保持・個人情報」第3回となる今回は、連携・会議・照会で情報を共有する前に、文書による同意の有無と範囲をどのように確認するかを整理します。重要なのは、同意書を保管しているかどうかではなく、実際に提供した相手、目的、情報の内容と、同意の範囲が一致しているかです。
本稿でいう「クラスター」とは、運営指導で示される多数の着眼点を、中原太事務所が実務上の観点から整理・分類した独自の区分です(行政の公式用語ではありません)。行政の着眼点を単に並べるのではなく、事業所運営のどの場面でその着眼点が意識されるかを基準に、関連項目をまとめています。
行政の確認ロジックは「書類→記録→運用」です
まず確認されるのは「書類」です。個人情報の利用や提供に関する同意書が存在し、誰の情報を、誰に対して、どのような目的や範囲で提供するのかを明確に確認できる体制が出発点となります。そのため、支援会議や関係機関との連携、あるいは照会への対応といった情報共有が発生しやすい具体的な場面を想定し、情報の提供先や目的が正確に読み取れる同意欄や説明文書をあらかじめ整えておく必要があります。
次に見られるのが「記録」です。同意を取得した日付、対象者、署名者、提供先、および目的を客観的に確認できるかどうかが重要になります。例えば、支援会議を実施した場合には、単に出席者を記録するだけでなく、誰に対してどのような情報を共有したかを後から確認できるように記録を残さなければなりません。また、利用者や家族の意向が変化し、同意内容の変更や撤回があった場合には、その内容を速やかに更新した記録も求められます。
最後に問われるのが現場における「運用」です。例えば、学校から利用者の支援状況について照会が届いた際に誰が同意の範囲を確認するのか、新しい機関が支援会議に参加する際に既存の同意書で足りるのか、あるいは家族の情報を共有する際の手順や同意範囲外の依頼への相談窓口が明確になっているかなど、現場の職員がこれらの具体的な問いに対して適切に答えられる体制が整っているかどうかが重要視されます。
つまずきやすい点:個人情報の同意書は存在するものの、実際の連携先をカバーできていない
何が問題か
実務における最大の問題は、事業所が利用開始時に「関係機関への情報提供」といった抽象的な同意書を取得しているだけで満足し、実際の支援会議や他機関からの急な照会に対応する際、職員が具体的な提供先や情報の範囲を検証しないまま個人情報を共有してしまうことです。新たな医療機関や学校が会議に加わった際にも、既存の同意書がその機関をカバーしているかを管理者が確認せず、「支援のため」という主観的な大義名分だけで、その場で情報を提供してしまう不適切な慣習が挙げられます。
なぜ問題か
支援の必要性と手続きの正当性は全くの別問題であり、こうした安易な情報提供は、個人情報保護委員会が規定する「第三者提供における本人同意の原則」という法的な義務に明確に違反するからです。障害福祉の現場で共有される内容は利用者本人のデータにとどまらず、家族の生活状況や医療情報といった極めて機微なプライバシーを含んでおり、対象ごとの厳格な同意がなければ、本人以外の個人情報まで本人の同意のみで違法に流出させる重大なリスクをはらんでいます。
ありがちな誤解(NG解釈)
「支援会議は利用者様の支援を目的としているため、改めて同意を確認する必要はない」
「相談支援事業所からの正式な依頼であれば、利用者様の情報をそのまま伝えても問題ない」
「同意書に『関係機関』と包括的に記載していれば、具体的な提供先を特定しなくても有効である」
「ご本人の同意さえあれば、ご家族の情報も同じように共有して構わない」
「利用開始時に一度同意書を取得していれば、利用契約が終了するまで見直す必要はない」
「緊急性を要する照会であれば、まずは情報を開示し、後から同意を確認すればよい」
「会議の出席者さえ記録に残っていれば、どのような内容を共有したかまで詳細に記録する必要はない」
――このような誤解に陥ってしまうと、利用者を支援するための関係機関連携と、個人情報を保護するための確認手続きが、まるで対立するもののように切り離されてしまいます。事前に同意の有無や範囲を確認する目的は、決して情報共有や連携を制限して止めることではありません。むしろ、本人やご家族が正しく理解し同意した範囲において、必要な相手へ必要な情報を安全かつ円滑に提供するためにこそ、事前の確認と正確な記録が必要となるのです。
そのまま使えるチェックリスト(書類/記録/運用)
書類
- 個人情報の利用・提供に関する同意書がある。
- 提供先、提供目的、提供する情報の範囲を確認できる。
- 支援会議又は関係機関連携についての説明資料がある。
- 利用者本人だけでなく、家族に関する情報を共有する場面を整理している。
- 同意内容の変更又は撤回を受けた場合の取扱いを決めている。
記録
- 同意取得日、対象者、署名者、提供先、目的を確認できる。
- 会議の出席者及び共有内容が記録されている。
- 個個別個別個別の照会又は情報提供について、提供先・目的・内容を確認できる。
- 同意内容を変更又は撤回した場合の更新記録がある。
- 変更後の同意内容を関係職員へ共有した経過が残っている。
運用
- 情報提供前に、担当職員が同意の有無と範囲を確認している。
- 会議参加者が変わる場合、既存の同意内容を確認している。
- 同意範囲外又は未同意と思われる依頼は、管理者へ確認を上げている。
- 会議後に、提供先と共有内容を記録している。
- 同意内容の変更又は撤回があった場合、関係職員へ速やかに反映している。
- 急ぎの照会であっても、確認手順を飛ばさないことを職員間で共有している。
まとめ
個人情報に関する同意確認は、単なる運営指導対策としての手続きにとどまらず、利用者や家族との強固な信頼関係を築き、事業所を予期せぬ法的リスクから守るための防衛策でもあります。利用開始時の形式的な同意だけで満足するのではなく、日々の会議や急な照会といった実務の動きに合わせて「書類・記録・運用」を常に連動・更新させていくことを心がけます。
【免責事項】
本稿は、運営指導で確認されやすいポイントを、実務の目線で整理したものです。制度の取扱いは年度や自治体、事業所の状況によって変わることがあるため、最終的には最新の公式資料とあわせてご確認ください。また個別具体的な判断において迷う点や不安が残る場合は、状況を伺ったうえで整理のお手伝いもできますので、お気軽にご相談ください。