令和8年度 障害福祉サービス等 報酬改定 第三回:就労移行支援体制加算の見直し(6月施行)──新たなキャップの導入について実務目線で整理
この記事のねらい
令和8年度の報酬改定に含まれる内容は、ざっくり言うと:
- 処遇改善加算の加算率を厚くする
- 就労移行支援体制加算の取得にまつわる一部の「抜け道」を塞ぐ
- B型の基本報酬区分の見直し
- 新規指定の一部サービスに「R9改定までの応急的な単価引下げ」を導入する
この4本です。
シリーズ第三回目の本稿では、「2. 就労移行支援体制加算の取得にまつわる一部の「抜け道」を塞ぐ」について深堀りしていきます。この改定に含まれる具体的な内容としては以下のとおりです。
- 一事業所で算定可能となる年間の就職者数に上限(事業所定員数まで)を設けること
- 他事業所で過去3年間に算定実績がある利用者については、原則として算定不可であること
多くの事業者さんにとって無関係ではいられないトピックではありますが、まず誰が対象で、どのルールがどう厳格化されるのかを、資料の文言に沿って丁寧に見ていきます。
「今年、加算を見込んでいる就職者数は“定員”の範囲に収まっているのか」
「同じ利用者が再就職した場合でも、加算を算定できるケース/できないケースはどこで分かれるのか」
「過去3年以内の算定実績を、実務としてどう確認し、どう記録しておけばよいのか」
――厚労省資料を中心に、このような不安を解きほぐします。
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この改定ポイントは誰に関係があるのか?
まず第一に、自事業所のサービス種別がそもそもこの加算の対象かです。就労移行支援体制加算の対象サービスとして以下の4つ(細分化すれば5つ)が列挙されています。
- 生活介護
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
これらのサービスを提供していない事業者には直接かかわりはありませんが、今後多機能展開を見据えている場合には、理解しておく価値はあると言えます。
次に当然ではありますが、これまで就労移行支援体制加算を算定しており、引き続き算定を継続したい事業者、あるいは今年から算定を検討している事業所です。今回の見直しは「加算の点数が上がる/下がる」というより、算定できる人数や対象者の範囲を締める話なので、収入見込みや受入れ計画に影響があります。
事業所が今やるべきこと
前述の通り、今回の見直しは、就労移行支援体制加算について①年間の算定可能な就職者数に「事業所の定員数まで」という上限を設けること、及び、②他事業所で過去3年間に算定実績がある利用者は原則として算定不可とすること(ただし市町村長が適当と認める者等の例外あり)、この2点に集約されます。したがって事業所側の当面の実務は、次の3つに整理できます。
まず1つ目は、「定員上限が収支計画に与える影響の点検」です。令和8年度に見込んでいる一般就労移行者数が定員数を超えていないかを、事業計画・収支計画の前提として再確認してください。
2つ目は、上限適用後の再試算です。もし上記のような、「算定予定人数が定員を超える前提」で収入計画を置いていた場合には、上限(=定員数)に合わせた前提で再試算し、年間の収入見込みやKPI(就職者数の目標設定)を現実に合わせて調整します。
3つ目は、「過去3年」ルールを確認・記録する仕組みづくりです。かつての「過去3年」ルールは、同一利用者につき同一事業所において3年に1回のみ算定可能であることを指していましたが、本改定によって、「どの事業所での実績かを問わずに3年に1回」の制限に変わっています。そのため、新規受入時に、過去3年以内に他事業所で本加算の算定実績があるかどうかを確認できるよう、ヒアリング項目と記録様式(確認した事実/根拠/同意の有無など)を整備しておくのが現実的です。加算の請求は事業者主導で行われるため、利用者さんご本人は自分の前回就職の際にこの加算が算定されていたかどうか不明な場合もあり得ます。なお、ハラスメント等やむを得ない事情で退職した場合にはこの3年ルールが適用されないため、改めて本加算を請求できる余地が残ります。ただしその場合であっても、最終的には市町村長に適当と認められる必要があるため、退職時の利用者さんの状況を丁寧に把握し、個人の尊厳に最大限配慮したうえでプロセスを進めるべきと言えます。
まとめ
今回の見直しで押さえるべき要点は、「定員上限」と「過去3年ルール」の2つです。事業所としては、①今年度の就職者見込みが定員内に収まるかを再点検し、②新規受入時に過去3年の算定実績を確認・記録できる運用を先に整える――この順で動けば足ります。
【免責事項】
本稿は、令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定(期中改定)について、現時点で公表されている公式資料をもとに、事業者が押さえるべきポイントを実務目線で整理したものです。制度は未施行であり、施行に向けて告示・通知・Q&A等で表現や手続が微調整される可能性があります。最終的には最新の公式資料(告示・通知を含む)とあわせてご確認ください。また、個別具体の判断で迷う点がある場合は、状況を伺ったうえで整理のお手伝いもできますので、お気軽にご相談ください。