令和8年度 障害福祉サービス等 報酬改定|全体像:4つの論点と、事業者が注意すべきポイント
要するに?
令和8年度の「期中改定」に含まれる内容は、ざっくり言うと:
- 処遇改善加算の加算率を厚くする
- 就労移行支援体制加算の取得にまつわる一部の「抜け道」を塞ぐ
- B型の基本報酬区分の見直し
- 新規指定の一部サービスに「R9改定までの応急的な単価引下げ」を導入する
影響があるのは?
- 処遇改善加算を取っている、または取得予定の事業者(相談系含む)
- 就労移行支援体制加算を算定する事業者
- 令和6年の新計算方式の適用によって算定区分が上昇した就労継続支援B型事業者
- 令和8年6月1日以降に新規指定を取得する一部のサービス種別事業者
なお、本稿を含めた本解説シリーズを投稿している令和8年3月時点においては、これらの内容については未施行であり、告示等で微調整される可能性は残ります。
何が変わるのか?
論点①:処遇改善加算の拡充(賃上げ対象の範囲を拡大し、上乗せ加算も用意)
まず、これまでの処遇改善加算の対象だった「福祉・介護職員等のみ」から「障害福祉従事者」にその範囲が拡大され、加算割合自体も増やすことで月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現するための措置が入ります。次に、生産性向上や協働化の取組に尽力する事業者を特に評価し、月0.3万円(1.0%)の上乗せ加算も別途用意されています。更に、これまで処遇改善加算の対象外だった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援の各サービスについても、今回新たに処遇改善加算の対象とされました。
詳しくは、第2回の記事をご参照ください。
論点②:就労移行支援体制加算の見直し
就労移行支援体制加算については、かねてより「同一利用者がA型事業所等(就労移行支援体制加算を算定する事業所)と一般就労の間で離転職を繰り返し、その都度加算を取る」といった、制度趣旨から外れるような算定の仕方が問題視されていました。そこで本改定では、一事業所で算定可能となる年間の就職者数に上限を設ける(事業所の定員が年間のキャップになる)等の適正化が入ります。さらに、他事業所で過去3年間に算定実績がある利用者についても、同様に、算定不可であることがルール付けられました。
詳しくは、第3回の記事をご参照ください。
論点③:就労継続支援B型の基本報酬区分の基準見直し
令和6年度改定において平均工賃月額の新算定方式が導入されたことにより、報酬区分が上昇した事業所の割合が増えました。この反動を吸収し、また区分設定をより適切なものとするため、報酬基準額とその区分が見直されます。しかし、本改定の理由が上記の通りですので、令和6年度改定前後で報酬区分が上がっていない事業所には、この見直しの適用はありません。また、見直しによって今よりも報酬区分が下がってしまう事業所には、そのインパクトを和らげるため、新たに中間区分を挿入し、より細やかな報酬区分の設定が行われます。
詳しくは、第4回の記事をご参照ください。
論点④:新規指定(令和8年6月1日以降)の一部サービスに「報酬単価の減額」を実施
新規事業所に限り、令和9年度改定までの間、一定程度引き下げた基本報酬(応急的な報酬単価)を適用することになりました。対象は:
- 就労継続支援B型
- 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
なお、今回の減額措置は一律全てに適用されるわけではなく、配慮措置として、重度障害者対応事業所(例:医療連携体制加算Ⅳ算定利用者等)や特定地域事業所(離島・山間、自治体が客観的に必要として設置する事業所等)などについては、これまでの単価が適用されます。
詳しくは、第5回の記事をご参照ください。
ご自身の事業所に関係がありましたか?
①処遇改善:まず、改定後の処遇改善加算の要件をチェックしましょう。I/II/III/IVの全てにおいて、「上乗せ加算」を取らなくても、満たすべき要件が増えています(誓約でも可)。上乗せ加算を目指す場合には、その要件の中身も見てください。最後に、相談支援系は新規加算取得となります。今回、加算は「IVのみ」ではありますが、まずは要件を理解したいです。
②就労移行支援体制加算:令和8年度の就労移行を見込んでいる人数が、事業所の定員以下になっているか、念の為確認したいです。また、新たに受け入れる利用者さんが従前の事業所で就労移行の経験があるのか、その場合に前の事業所は加算を申請していたのか、今後は事業所の移動を通じて3年縛りが入りますので要注意です。利用者御本人が知らない場合もあります。なお、この改定項目は4月に実施されます。
③B型報酬区分の見直し:令和6年度の新計算方式の導入で報酬区分が上昇していた場合、新たな報酬区分に変更される可能性があります。これまでのI/II/III....という区分の間にAやBといった中間区分(極端な報酬減額をさせないためのバッファ)が挿入されていますので、自事業所の工賃と見比べ、変更後の単価を見てみてください。
④新規指定の応急単価:厚労省資料においても、駆け込み対応などは取らずに、平常通りの指定審査が行われるよう明示されています。また、減額とならないための各種要件は「加算の取得」であり、何らかの事業の見込みではありません。あくまで列挙された加算を「取得している」状態であることが配慮措置の条件ですので、ご確認ください。
【免責事項】
本稿は、令和8年度の障害福祉サービス等報酬改定(期中改定)について、現時点で公表されている公式資料をもとに、事業者が押さえるべきポイントを実務目線で整理したものです。制度は未施行であり、施行に向けて告示・通知・Q&A等で表現や手続が微調整される可能性があります。最終的には最新の公式資料(告示・通知を含む)とあわせてご確認ください。また、個別具体の判断で迷う点がある場合は、状況を伺ったうえで整理のお手伝いもできますので、お気軽にご相談ください。